旅行記|2017.09.07

10年後のいい日旅立ち・西へ

始発からいつものルートで乗り継ぎを重ね、米原までやってきた。普段ならすぐさま隣の新快速に乗り換えるのだが、今日は後続の接続の都合上そこまで急ぐ必要がない。それになんといっても今回は姫路まで2時間半乗り通す必要がある。確実に席を確保するため、1本見送って次に乗ることとした。

本日は木曜日。「平日の昼間からなぜこんなところに」と思われそうだが、今日から4日間少し遅めの夏休みとなる。夏休みは各自ばらばらに取得するのだが、私は青春18きっぷが使える最後の週末に合わせた日程を希望した。昨年は仕事が忙しく鉄道旅行ができなかったから、はまなすで北海道に出かけて以来2年ぶりの鈍行旅となる。かねてから乗りたかった福塩線、三江線や小野田線を訪問すべく計画を立てた。

お昼は接続時間を利用し駅うどん。そばではなくうどんが主力メニューというのが関西らしい。「旅だから」とトッピングが豪華めの天玉うどんを注文した。薄味のかけだしで、ぬるめなのが有難い。実は昼休みによく近所のうどん屋へ行くのだが、温うどんのつゆが熱すぎて胸やけを起こすので、仕方なくいつも冷たいのを注文している。

3番線に入線していた新快速に乗り込むと、車内はガラガラだった。外は天気予報通りの雨模様。本日は列車をひたすら乗り継ぐだけで問題はないが、明日は沿線歩きをする予定なので、予報通り回復してほしいと思う。発車3分前になって大垣からの列車が到着し、座席はほぼ埋まった。

新大阪あたりで隣人が替わった。停車する駅々ではおなじみの自動放送が流れており、西へきたことを実感する。そういえば今乗っている編成もそうだが、先頭車両に奇妙なでっぱりのあるのが目に付く。調べてみると転落防止のものだそうだ。2年前に大津・宇治を訪れた際には見た記憶がないから、ここ最近で急に増えたのだろう。どうしても初めは不思議な光景に見えてしまうが、安全に資するものなら素晴らしいことだと思う。

神戸のあたりで左側の車窓に海が現れた。車内が一斉に左を眺める。港が近いためか大きな船が航行しており、なんとも異国情緒溢れる風景だ。そう思うと同時に、神戸線で海が見られることを初めて知ったことに気付いた。この辺りはもう、夜行列車で通過したことはあれ、日中に乗ったことはないエリアなのだ。

終点の姫路に到着。十数分の接続時間で、改札を通って駅前へ出てみる。特に下調べをしているわけでもないので、どの出口から出るかは勘で決める。たまたま出た先のずっと突き当りに姫路城が見えた。駅前広場の地面が乾いている際の際まで行って一枚。周りの人たちもスマホで写真を撮り始めた。

次はこれに乗って約20分、相生まで行く。短時間の乗車だから立ってもいいかと考えていたが、思いのほか車内は空いていた。ここまで乗り換え含めて9時間余り、全行程で座席が確保できている。2年前の連休に東京→青森を乗り継いだときは修行のようだったから、それを考えると本当に楽だ。

この車両はこの辺りでは最新のもののようで、映像広告の流れる機械が吊り下がっている(情報ビジョンというらしい)。広告の内容は東京で流れているものとさほど変わらないようだ。外には見たことのない景色が広がっているのに、つい映像に目が行ってしまう。

相生で一気に時代が戻った。かつて通学で利用した115系だ。車窓も車両に合わせるかのように田舎然としてくる。駅には利用促進の看板が見える。学生時代の懐かしき音を聴きながら山間を走るうち、自然と旅情が湧いてきた。「古い車両」は鉄道旅行を彩るひとつの要素なのだと思う。

瀬戸で高校生の集団が乗り込み、静かだった車内は一気に賑やかになった。気付けばもう下校の時刻。世間では今日はありふれた平日、ありふれた木曜日なのだ。いつしか新幹線の高架が隣に寄り添っていた。キハ47形タラコ色で溢れる岡山気動車区が右手に現れると、間もなく岡山駅に到着だ。

橋上駅舎は人々で混雑していた。改札を出てみるか迷ったが、ここ岡山は中四国地方最大の鉄道の要衝。各方面から発着する列車たちを眺めることにした。

階段を降りると、ちょうどホームに気動車が入線してきた。キハ47形のタラコ色2連+国鉄急行色2連だ。国鉄急行色のほうの顔には「ノスタルジー」とあり、近年流行りの観光列車の車両のようだ。この頃は昔ほど熱心に趣味活動をしていないこともあって、このような趣味者心をくすぐられる車両が走っていることを実際ここで見るまで知らなかった。夜行列車の廃止、ローカル線の廃線、国鉄時代の名車の廃車…とこの趣味はつまらなくなる一方だと思い込んでいたが、探しさえすればまだ面白いものは残っているのだ。

ここからは吉備線に乗車する。座席はおおよそ学生で埋まっていたため、最後部運転席後ろのスペースに収まることにした。発車直前に向こうのホームを見ると、当然のように115系湘南色が発着している。今度は十分な下調べをしてこれらの車両にも乗ってみたいと、近いうちの再訪を決意した。出かけてみなければわからないこともあるものだとつくづく思う。

乗車中の吉備線にしてもそう。最近ありがちなステンレス質の車両が待っているのかと思いきや、まさかのキハ47形タラコ色ときた。各駅ごとに桃太郎の車内チャイムを流しつつ学生を降ろしていく。これだけの乗客があれば、少なくとも路線自体は安泰なのだろうと思う。約40分の旅を終え総社駅の切り欠き部に入る。ホームは伯備線の列車を待つ学生で溢れていた。

10年後のいい日旅立ち・西へ(2)

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